テクノロジーの進歩が著しい昨今、フィンテックやエドテックなどのクロステックが注目されています。
本記事では「クロステックについて詳しく知りたい」「製造業でも活用できるのか」と考えている方のために、クロステックの意味や種類、注目されている理由などについて紹介します。
製造業におけるクロステック導入についても解説しているため、自社への導入を検討する際に役立つでしょう。
目次
クロステックとは
クロステック(X-Tech)とは、既存の産業にAI、ビッグデータ、IoTといった最先端テクノロジーを融合して変革を起こすサービスや製品、またはその取り組みのことを指します。
「X-Tech」は「X(エックス:掛け合わせる)」と「Technology(テクノロジー:技術)」を組み合わせた造語です。
これまで限られた業界でしか活用されていなかった先端テクノロジーですが、近年では活用領域が大きく広がり、さまざまな業界で活用されています。
クロステックの活用領域
クロステックはさまざまな産業分野で取り入れられており、業界ごとに「〇〇Tech」と呼ばれます。
- 【クロステックの種類の例】
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- FinTech(フィンテック)=金融×テクノロジー
- MedTech(メドテック)=医療×テクノロジー
- EdTech(エドテック)=教育×テクノロジー
- RE Tech(リーテック)=不動産×テクノロジー
- GovTech(ガブテック)=政府×テクノロジー
- FoodTech(フードテック)=食×テクノロジー
- SportsTech(スポーツテック)=スポーツ×テクノロジー
例えば、EdTech(エドテック)なら、オンラインスクールやVR体験学習、生徒一人ひとりに合わせた個別プログラムの作成などが挙げられます。コロナ禍で休校を余儀なくされた中、エドテックは子どもたちの学びにおいて重要な役割を果たしました。
クロステックを取り入れることで新たな価値を生み出し、人々の暮らしを豊かにしていけるのです。
クロステックが注目される理由
クロステックが近年ここまで注目を集めている背景には、テクノロジーの進化はもちろん、消費者の行動変容や人材不足などさまざまな理由が混在しています。
ここでは、クロステックが注目される理由を紹介します。
- 【クロステックが注目される理由】
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- テクノロジーの進化
- 人材不足への貢献
- 業務効率化ができる
テクノロジーの進化
クロステックの台頭には、テクノロジーの進化が深く関係しています。進歩した技術と他分野の産業が組み合わさり、多くの変革をもたらしているのです。
クロステックに用いられるテクノロジーの例を以下に紹介します。
- 【クロステックに使われる技術例】
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- AI:人工知能、人間の知能を人工的に再現したもの
- IoT:「モノ」自体をインターネットに接続する技術
- クラウド:インターネット環境があれば、どのデバイスからでもサービスを受けられるシステム
- ビッグデータ:さまざまな性質をもった巨大で複雑なデータの集まり
- VR:仮想現実、現実の世界を仮想体験する技術
- ブロックチェーン:複数のコンピュータで情報を共有し、データの透明性・正確性を保つこと
- ロボティクス:モノに対してテクノロジーを実装すること
人材不足への貢献
現代の日本では、少子高齢化による労働力の減少が深刻な課題となっています。人材不足に苦しむ業界も多い中、クロステックの導入は解決の糸口となり得ます。
例えば、Retail Tech(小売×テクノロジー)では、レジを自動化することで、レジスタッフを確保する必要がなくなり、人材不足の解消につながります。同時に、これまでレジスタッフにかけていた人件費を節約できるため、コストパフォーマンスが良くなる点もメリットだといえるでしょう。
業務効率化ができる
クロステックを導入すると、これまで人の手で行っていた作業をデジタル化することが可能です。そのため、あらゆる業界で業務の効率化が実現します。
例えば、LegalTech(法律×テクノロジー)では、紙ベースの資産やアナログな作業が多い法曹界の業務において、デジタル化を進めています。「法務文書作成支援システム」や「登記支援システム」、「オンライン法律相談」などが整ったことで、利用者も提供者側も効率的に手続きを進められるようになりました。
国を挙げて働き方改革が推進される中、ワークライフバランスや長時間労働の見直しが求められています。限られた人材・時間の中で業務をこなすためには、業務効率化が必要不可欠だといえるでしょう。
デジタル技術やITの発達により時間に対する価値観も変化しており、商品開発や注文から納品までの速さなど、BtoBでもBtoCであってもスピード感が求められる社会になっています。
製造業で求められているクロステック
製造業においても、クロステックの導入が急務だとされています。
製造業のクロステックと同義で「製造業のDX化」という言葉があり、その必要性や効果も注目されています。製造業のDX化とは、AIやIoTを駆使してデジタル化を促進し、業務効率化を図ることでより良い製品を提供し、利用者の生活をより豊かなものへと変革していくことを指します。
経済産業省が発表した「DXレポート」によると、2025年までにDX化を実現できなければ、世界での競争力が低下し、多大な経済損失を招くと予測されています。この問題は「2025年の崖」と称され、人手不足と同様に、これまで人の手や古いシステムに頼っていた企業が生き残れなくなることが懸念されています。
こうした事態を回避するために、DX化が強く求められています。DX化により業務効率が高まることで、より良い未来をつくるための新たな開発にリソースを費やせるようにもなるでしょう。
【参考】DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|経済産業省
製造業へのクロステック導入で実現すること
クロステックの導入は、製造業において企業の経営をサポートする強力な武器となることは間違いないでしょう。ここでは、クロステックの導入によってもたらされる効果を紹介します。
- 【製造業にクロステックを導入することで実現すること】
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- 情報を見える化して一元管理
- 生産性の向上
- 無駄なコストの削減
- 市場のニーズに合わせた柔軟性の確保
これらはほんの一例に過ぎず、クロステックの導入、DX化の推進により実現できることにはさまざまな可能性を考えられます。
情報を見える化して一元管理
見える化とは、数値やデータを可視化することで問題点の発見や解決につなげていくための取り組みです。各工程に潜む「ムリ」「ムダ」「ムラ」を見つけて業務改善を図ることを目的としています。
先端テクノロジーを活用してDX化を進めることで各工程の見える化が実現すれば、生産工程に関するデータの一元管理が可能になります。トラブルが発生した場合も、問題点のフィードバックと改善をスムーズに実施できるでしょう。
また、繁忙期や閑散期を踏まえた調整、物流の最適化、顧客データからの売上予測など、各種データから効率的に戦略を立てることもできるようになります。見える化により業務効率が上がれば、新規顧客の開拓や新たな技術の開発などにリソースを割けるようになり、企業の発展にもつながるでしょう。
生産性の向上
生産性の向上は、製造業において最も重要な課題のひとつです。クロステックを導入することによって、製造現場でほとんどの工程を自動化・半自動化することができるだけでなく、副次的な業務も自動化できます。そのため、全体の生産性が著しく向上する可能性があるでしょう。
また、いまだに多く見られる紙媒体での記録をデジタル化できるため、ペーパーレス化の促進にも寄与します。記録の手間やデータ検索の時間を削減できることで業務効率が上がるだけでなく、管理体制の強化につながる点もメリットだといえるでしょう。
無駄なコストの削減
AIなどの活用により稼働人数を減らせれば、人件費などのコスト削減につながるほか、生産全体にかかっていた時間的なコストも大幅に削減できます。
また、人の手よりも正確な作業が可能になるため、不良品の発生を最低限に抑えられる、人的ミスを減らせるといった効果も期待できるでしょう。その結果、不良品の対応などにかけていた無駄なコストも削減できます。
安定した品質で生産できるようになるため、顧客の信頼を高められるというメリットもあります。
市場のニーズに合わせた柔軟性の確保
市場のニーズが目まぐるしく変化する中、企業には「ダイナミックケイパビリティ」が求められています。ダイナミックケイパビリティとは「市場や顧客のニーズなどの変化に対応し、企業自ら変革していくフレームワーク」です。著しい技術の進歩や消費行動の変化といった市場ニーズに対応し、企業として発展していくためには、柔軟に対応できる体制を築くことが欠かせません。
クロステックの導入により、業務効率化や人材育成システムの強化を図れるため、こうした市場の変化へ柔軟に対応できる業務体制と人材育成を実現できます。市場の変化に備えて早めに体制を確立し、柔軟性を確保しておくことが望ましいでしょう。
実績班長を活用したクロステック導入事例
「実績班長」は、製造業の現場に特化したシステムで、現場のさまざまなデータを収集して活用可能です。進捗管理や品質管理、労務管理や在庫管理などの機能から、必要なシステムだけを選べるため低コストでの導入できるでしょう。
導入事例:気高電機株式会社
「実績班長」を導入することで不良の削減に成功し、コスト削減や業務効率化を実現した事例を紹介します。
業種 | 製造業(電機、機械) |
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サービス内容 | 家電製品の「開発から完成品まで一貫したものづくり」 |
- 【導入前の課題】
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- 1からの構築ではなく、システムのプラットフォームに装置を連動させて使用できるシステムを検討すること
- IoTを活用して全成型機、周辺設備を接続して成形条件と品質データの視える化を行うこと
- 【導入後の効果】
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- 生産進捗の見える化による稼働率の向上
- データ分析による不良出現傾向の事前検知
実績班長の導入により生産進捗の見える化が実現し、次工程の生産準備が間に合わないことで発生していた不稼働ロスが減少。段取り準備の最適化により休止時間の短縮、稼働率向上にもつながっています。
同社では、これまで「不良品ができ上がってしまって初めて設備の不備が発覚する」ということが多かったものの、温度データなどをきちんと取ったことで、金型の冷却不全の傾向が見え、不良品が発生するラインが明確になり、不良の発生を防げるようになりました。
実績班長の導入により、無駄をなくし、ミスを事前検知することで、イレギュラーに発生し得る不良を未然に防げているという実績があります。実績班長は、すでにプラットフォームができ上がっているため、オーダーを加えて思い通りのシステムを構築しやすい点も魅力のひとつです。
導入事例: 株式会社府中テンパール
アナログな工数実績から「実績班長」を導入することでDX化に成功した事例を紹介します。
業種 | 製造業(配線器具) |
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サービス内容 | 配線器具製造事業 |
- 【導入前の課題】
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- パッケージシステムを利用することで費用を抑えること
- 部品の組立工場において段取り替えにかかる時間の把握ができるようにすること
- 売り上げに対する実工数を見える化してコスト分析を行うためのデータを取得すること
- 【導入後の効果】
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- パッケージシステムの採用による低コストでのシステム導入
- モデル工程に沿って管理ができるパッケージならではの仕組みの簡易さ
原価工数の測定をストップウォッチと目視で行っていた同社は、実績班長の導入で正確な測定が可能となりました。個人間のスキル差が明らかとなって製品品質の安定につながり、外国人労働者の多い職場でも効果があることを実証しています。
まとめ
今回は、クロステックの意味や種類、導入事例などを紹介しました。製造業にクロステックを導入すると、人材不足の解消やコスト削減、業務効率化につながると同時に、利用者の暮らしをより良いものへと変革していくことができます。
製造業のクロステックなら「実績班長」がおすすめです。実績班長はIoTを活用することで見える化や業務効率化を実現します。DX化の第一歩として、導入を検討してみてはいかがでしょうか。