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COLUMN実績班長のコラム

2023.10.31

フェイルセーフの身近な事例|重視される理由と設計のポイントを解説します!

フェイルセーフ(fail safe)は、機械や設備に不具合が発生した際にリスクを負わないようにシステム構築する手法です。とくに製造業においては、安全確保のためシステム構築の際は導入しておきたい概念となります。

本記事では、フェイルセーフが取り入れられている身近な事例について解説しています。フェイルセーフの概要を知りたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

フェイルセーフ(fail safe)とは

フェイルセーフとは、機械・設備に故障や破損、誤作動などの異常が発生した際でも、安全に動作・停止させられるようにシステム構築する手法です。

ファイルセーフは、あらゆる分野で使用される機械や設備に必要不可欠な手法です。とくに、人命にかかわるシステムや、高い信頼性が求められる分野では重要視されます。

フェイルセーフとよく似た概念として使われるのが「フールプルーフ(foolproof)」です。いずれも失敗から人を守る工夫であるのは共通ですが、フェイルセーフは「失敗しても安全を確保する工夫」であるのに対し、フールプルーフは「ミスしようとしてもできない工夫」といった違いがあります。

フェイルセーフが重視される理由

フェイルセーフが注目される理由は、次のとおりです。

【フェイルセーフが重視される理由】
  • 技術が進化し、システムが複雑化しているため
    システムが複雑化することで、一部の故障がシステム全体へ与える影響が大きくなっています。そのため、一部が故障してもシステム全体の信頼性や安全性を失わないことが求められます。
  • 安全意識が高まっているため
    日常生活において、安全意識は年々高まっています。とくに人命にかかわる場面では、安全性の確保が必要不可欠な要素となっています。
  • マーケティング戦略の一環
    製品やサービスにフェイルセーフ機能があることを公開し、市場から安全性や信頼性を得るといったマーケティング戦略でも使用されます。ただし、過剰なアピールはマーケティングとして逆効果となるため、適切な情報を公開することが重要です。

いずれの点も、市場で「安全性の確保」が重要視されていることが要因となっています。

フェイルセーフの身近な事例

フェイルセーフは前項で説明したとおり、不具合が起きた際でも安全な状態で動作・停止させられる技術です。普段生活している中にも、フェイルセーフの備わったものが多く存在しています。

ここでは、身の回りで使われているフェイルセーフの事例を紹介します。

【フェイルセーフの身近な事例】
  • 道路や鉄道の信号機システムのフェイルセーフ設計
  • エレベーターシステムのフェイルセーフ設計
  • 自動車のブレーキのフェイルセーフ設計
  • 航空機のエンジンのフェイルセーフ設計
  • 工場の自動化システムのフェイルセーフ設計

道路や鉄道の信号機システムのフェイルセーフ設計

道路や鉄道の信号機は、万が一故障や誤動作があった場合、大事故につながる可能性があります。停電や故障が起きた際には、次にあげるフェイルセーフが作動するようになっています。

【信号機システムのフェイルセーフ例】
  • 列車検知装置の故障や停電では信号がすべて赤になる
  • 列車の緊急停止や自動停止機能が設けられている
  • 踏切遮断機の故障で自動的に遮断かんが降りる
  • 停電時には非常用の電源で信号が作動する など

エレベーターシステムのフェイルセーフ設計

エレベーターでも、落下やドアへの挟まりなど、人命にかかわる重大な事故が発生する危険性があります。そのため、さまざまなフェイルセーフ機能が備えられます。

【エレベーターシステムのフェイルセーフ例】
  • 一定速度以上の落下時に、非常止め装置が作動する
  • ドアに挟まれた場合、センサーが作動しエレベーターを動かなくする
  • 重量オーバーの場合、ブザーなどで知らせる
  • 最上階・最下階を行きすぎた場合、衝撃緩衝器が設置されている
  • 地震が発生した場合、近くの階で緊急停止する など

自動車のブレーキのフェイルセーフ設計

自動車のブレーキも、故障した際に停止できないと命にかかわります。万が一の故障でもブレーキがかけられるよう、安全確保のためにフェイルセーフ機能が設計されます。

【自動車のブレーキのフェイルセーフ例】
  • 作動力伝達を2系統持たせ、片方が故障してもブレーキがかけられる
  • エアブレーキのエア圧が下がると、自動的にブレーキがかかる
  • ABS(アンチロック・ブレーキシステム:Anti-lock Breake System)が故障しても、通常のブレーキシステムは作動する など

航空機のエンジンのフェイルセーフ設計

航空機のエンジンは、飛行時に停止しても問題ないような設計がなされています。また、飛行時にはエンジン部分以外で不具合が出ても安全な飛行が確保できるよう、機体全体にフェイルセーフ機能が備えられています。

【航空機のエンジンのフェイルセーフ例】
  • エンジンが故障しても飛行が続けられるよう、複数のエンジンを搭載している
  • エンジンの落下、尾翼の破損などでも飛行が可能となっている
  • エンジンが停止しても、失速していなければ着陸が可能となる など

工場の自動化システムのフェイルセーフ設計

工場の自動化システムでも、フェイルセーフ機能が求められます。とくに大規模な設備である場合、最悪の場合は命にかかわる事故となる可能性は否めません。製造現場では製造を止めないのも大切ですが、事故防止を最優先とすることが求められるでしょう。

【工場の自動化システムのフェイルセーフ例】
  • 機械が何らかの異常を感知した場合、機械を自動停止する
  • 作業者が何らかの異常を感知した場合、機械を非常停止させる
  • 異常により停止した機械が、急に再起動しないようにする など

フェイルセーフを設計する時のポイント

フェイルセーフを設計する際は、次の2点に注意します。

【フェイルセーフを設計する時のポイント】
  • 安全装置も100%ではないことを理解する
  • 起こりうるリスクは必ず現場のスタッフとすり合わせる

安全装置も100%ではないことを理解する

安全装置を導入したとしても、100%安全が確保できるわけではありません。

フェイルセーフを意識して安全装置を設置しても、安全装置自体のトラブルや電源の切断などにより、必要なときに動作しない可能性が考えられます。

安全装置の導入ですべてのリスクを回避できると考えるのではなく、二重三重の対策を講じておくことが求められます。医療現場や危険箇所など、人命にかかわる場所に設置するシステムの場合は、とくに注意が必要です。

起こりうるリスクは必ず現場のスタッフとすり合わせる

フェイルセーフを設計する際は、現場スタッフの意見を必ず入れるようにしましょう。

フェイルセーフの設計者が設置される現場や機器に詳しくない場合、適切でない部分にリスクを設定してしまう可能性があります。机上で計画するだけでは、リスクの重篤度や考えられる発生頻度にズレの生じる危険性があり、実際に運用となった場合にうまく機能しないかもしれません。

初期の設計段階から現場の意見を取り入れることで、実状にあったフェイルセーフの設計が可能となるでしょう。

まとめ

フェイルセーフをシステムに導入することで、万が一トラブルが起きた際に安全確保が可能となります。身近な場所にも採用されており、とくに生命にかかわるシステムには導入されているケースが高くなっています。

フェイルセーフが導入されているからといって、必ず安全が確保できるわけではありません。設計する側となった場合は、想定されるリスクに対して二重三重の対策が求められます。

フェイルセーフは信頼性や安全性確保のために必要な考え方であり、現代社会において欠かせないシステムです。新たに設備を導入する際は、フェイルセーフを意識した設計が必要となるでしょう。

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