少子高齢化が加速するにつれ、さまざまな問題の発生が懸念されます。団塊世代が後期高齢者となる2025年には5人に1人が後期高齢者になるとされ、社会的に大きな問題となると予測されるのが「2025年問題」です。
本記事では、2025年問題とはどのような内容か、簡単に解説しています。少子高齢化がもたらす社会的な影響をあらかじめ知っておき、早めに対策しておくようにしましょう。
目次
2025年問題とは
2025年問題とは、団塊の世代以前(1950年より前)に生まれた方が2025年に全員後期高齢者となる問題です。
現在約800万人いる団塊世代が後期高齢者となることで、人口の約1/5である約2,200万人が75歳以上となる超高齢化社会となります。
出典:総務省統計局高齢者の人口
2025年時点で75歳以上は人口の約18%、65歳以上は約30%です。2040年になると第2次ベビーブーム世代が65歳以上となることから、65歳以上の人口が約35%になると見込まれています。
2025年問題が社会に与える影響と課題
2025年問題によって、5人に1人が75歳以上の社会となります。高齢者人口の増加によって、次のような状況となることが予想されています。
- 【2025年の社会像予想】
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- 認知症高齢者数の見通し:約320万人
- 世帯主が65歳以上の高齢者世帯見通し:約1,840万世帯
- 65歳以上の1人暮らし世帯見通し:約680万世帯
- 年間死亡者数見通し:約160万人(うち65歳以上約140万人) など
このような状況になった社会では、次にあげる問題が起こり得ると考えられます。
- 【2025年問題が社会に与える影響と課題
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- 高齢者にかかる医療費の増大
- 人材不足の深刻化
- 後継者不足によって事業承継が困難
- 採用競争の激化
それぞれについて、詳しく説明します。
高齢者にかかる医療費の増大
2025年問題によって、医療費の増大が懸念されています。
2025年には約5人に1人が後期高齢者になると予測されています。高齢になると免疫力が低下することから、疾患のリスクが増大し、医療や介護にかかる費用が増えると容易に想像できるでしょう。
厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料」によると、後期高齢者医療制度が開始された平成20年では11.4兆円であった後期高齢者医療費は、令和2年では約16.5兆円まで増えています。
また、高齢化が進むのと合わせて少子化も進行しており、労働人口も減少しています。このままいくと、労働人口に対して高齢者人口の割合が増え、現役世代の金銭的負担が大きくなります。
内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年では労働人口1.9人で1人の高齢者を支える状況です。今後は2040年で1.5人、2065年では1.3人と、その割合が低くなると予想されています。
引用元:内閣府「第1節 高齢化の状況」
今後ますます高齢化社会が進むと予想されていることから、現役世代の金銭的負担をいかに減らせるかが課題となるでしょう。
国の対策:社会保障全般の改革
上記の課題を受けて、政府は「全世代型社会保障検討会議」を設置し、年金、労働、医療、介護など各分野において社会保障制度の改革を始めています。内容に関しては、高齢者向けだけではなくすべての世代にわたって社会保障の構築を目指すとしています。
- 【具体的な検討内容】
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- 75歳以上の医療費負担を増やし、現役世代の負担を減らす
- 4年で約14万人の保育の場を整備
- 男性育児休暇取得促進 など
人材不足の深刻化
少子高齢化社会による人材不足は、今後ますます深刻化すると考えられます。
パーソル総合研究所の調査では、2025年には505万人、2030年には644万人の人材が不足すると推測されています。とくに、サービスや医療福祉の業界ではその傾向が顕著です。
人手不足の問題は「高齢で働けなくなる人が増える」「若年者人口が減る」といった背景に加え、介護による退職も理由のひとつです。介護業界では、介護が必要となる人が増える一方で、働き手が減るといった深刻な問題を抱えています。
企業に求められる対策:女性やシニア層の潜在労働力を採用する
若年層の人口増加が期待できない現状において、女性やシニア層の採用で人手不足を補うのも有効な対策です。
女性においては、25歳から49歳まで出産育児で離職する割合が増え、労働人口の減少が見られます。政府からは保育所の整備を進める方針が出ていることから、企業には育児と仕事の両立が可能な環境整備が求められるでしょう。
定年退職後のシニア層においても、60歳以上が働ける状況となれば約163万人の労働人口が増える試算がなされています。再雇用や中途採用、リスキリングなど、個人の能力を最大限に発揮できる環境づくりが企業には期待されます。
企業に求められる対策:多様な働き方を認める
多様な働き方を認めることも、労働力の確保には重要です。介護・医療・サービスなど、とくに働き手の減少が著しい職種では早急な対策が不可欠となるでしょう。
女性やシニア層が活躍できる環境を整えるのとあわせ、時短・フレックス勤務、リモートワークやテレワークなどといった柔軟な働き方を受け入れることが、雇用側には必要となります。
企業に求められる対策:DX化を進めて生産性向上&属人化脱却
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進により、属人化から脱却し生産性向上を図るのも、人材不足解消の方法として有効です。
DX化とは、デジタル技術の活用で社会やビジネスを変容していく取り組みです。IT分野でも、システムの老朽化や人材不足でDX化が進められず、経済損失することを「2025年の壁」として問題視しています。
製造業においては、DX化の推進により次の問題が解決できるため、生産性向上と属人化脱却が図れ、人材不足に対応できます。
- IoT導入により作業を平準化し、省人化を図る
- 属人化されたノウハウをデータ化しデジタル化する
- ロボットへ置き換えられる部門は置き換える など
後継者不足によって事業承継が困難
少子化が進むことで後継者がいなくなり、事業承継が困難になる状況が考えられます。
中小企業庁の資料によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人であり、約半数の127万が後継者未定です。
これは日本企業全体の約1/3を占めており、現状を放置すると中小企業廃業の急増で2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとされています。
企業に求められる対策:M&Aを視野に入れる
後継者問題に悩む企業では、M&Aを視野に入れて企業の存続を検討するとよいでしょう。
M&Aとは、企業の合併・買収を指し、広義では業務提携を含めることもあります。家族・親族での事業承継が困難な場合、従業員の雇用確保や技術の継承などの目的で、M&Aを実施しているケースは多く見られます。
M&Aの件数は増加傾向ですが、後継者未定の企業数が127万社と多いため、売り手の掘り起こしと事業の磨き上げが一層求められるでしょう。
採用競争の激化
労働人口が不足する状況となった場合、採用活動の激化は避けられません。
少子高齢化による労働力の減少は深刻であり、どの企業が求人を出しても応募者が思うように集まらない状況です。また、テレワークやリモートワークなど新しい働き方が推進されていることで、企業へ所属して働く意識が薄くなっているのも採用が難しい一因となっています。
買い手市場が続いていた採用市場は現在売り手市場となっているため、今後企業には求職者に選んでもらう努力が求められるでしょう。
企業に求められる対策:企業価値を高める
採用市場で選んでもらえる企業となるには、企業価値を高めて長く働ける環境整備が必要です。
- 【選んでもらえる企業の条件】
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- リモートワーク・テレワークの推進
- フレックスや時差出勤などの採用
- 賃金体系の見直し
- 福利厚生の充実 など
また、採用方法もリファラル採用(既存従業員の紹介による採用)やSNSの利用など、新たな採用方法を取り入れるのも大切です。
実績班長導入は人材不足の課題にアプローチできる!
2025年問題への対策として、「実績班長」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
製造現場のIoT化によって作業効率向上や属人化の脱却を図ることで、人材不足の問題を解決へと導きます。
「実績班長」導入で人材不足の課題を解決した事例
東レ・モノフィラメント株式会社様では、「実績班長」の導入で現場の情報把握と属人化の解消を実現しました。
業種 | 製造業 |
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サービス内容 | ナイロン、ポリエステルをはじめ、各種合成繊維モノフィラメント、モノフィラメントを素材とする高次加工製品などの製造販売 |
- 【導入前の課題】
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- 自社システムの老朽化と、メンテナンス社員の後継者がいない問題があった
- 現場全体の状況把握が難しかった
- 【導入後の効果】
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- システムを実績班長へ集約し、メンテナンスできない問題を解決した
- 部署異動のオペレーション教育や、棚卸し業務の作業負担が軽減した
自社開発したシステムで部署ごとにデータ管理しており、システムの老朽化や脆弱性の問題を抱えていたそうです。システムのブラックボックス化やメンテナンスの後継者がいないこともあり、新たに「実績班長」を導入してシステムを再構築しました。
新システムにデータを一本化したことで、在庫管理の負担が減り、棚卸しを含む作業負担の軽減が実現できています。「実績班長」のサポートでシステムメンテナンスの後継者が不要になったのも、導入のメリットといえるでしょう。
まとめ
2025年問題は、団塊世代以上が後期高齢者となり少子高齢化社会が進むことで起こる問題です。労働者人口の減少により社会保障の負担がますます増え、労働者や後継者不足、採用の激化など、さまざまな問題が懸念されます。
2025年問題に対して、政府は各種対策を講じる動きを見せています。企業においても、今後予想される社会変化への対応が、これまで以上に求められるでしょう。